ベツレヘムの生誕(降臨)教会で、イエスが誕生したとされる場所を眺める-イスラエル&ヨルダン旅行記28

【神秘のペトラ遺跡&死海&聖地エルサレム巡礼旅】5日目

【1人参加旅ツアー・阪急交通社(トラピックス)】2019年8月23日~30日

 イエスが生まれた穴?!

 ベツレヘムの生誕教会にて

ここはイスラエルのベツレヘムという場所にある”イエス・キリストが生まれた”とされている生誕教会(降臨教会とも)である。その場所を拝むために観光客で出来た長い列をじっと我慢しながら並んでいる最中。

 

 生誕教会の奥側の景色 動画

 

ここまでも約1時間、列に並んだ。意外とじっと待つのもシンドイけど、周りのツアー参加者さん達と喋れるのでまだマシである。

 

さすがに並んでいる他の観光客は敬虔なクリスチャンが多いようで、とある国の観光客みたいに横入りしたりというのはなかった。


by『THE HOLY LAND-YESTERDAY AND TODAY』DAVID ROBERTS-VMB PUBLISHERS

こちらはDavid-Robertsが1839年にこの場所を訪れた時に描いた絵。ちょうどこの辺りの場所から描かれていて、細かい描写がされている。さすがにこの時代はそんなに観光客が多かった様子は見えない。


 

ただし現在はこのように観光客だらけ、それも一目イエス・キリストが生まれたとされている場所を見る為だけの列。

 

さてもう一息である。この教会はローマ帝国時代のコンスタンティヌス帝の母親であるヘレナが、キリストが生まれたとされる馬小屋の上に建てた教会である。

 

ただし馬小屋で生まれたというのも、事実かどうかは分からない。この福音書(聖書)は4人の書き手がいて、それぞれにちょっと違う内容が書かれており、現在我々の知るキリスト・ストーリーはそれらの話をごちゃ混ぜミックスしたものである。大筋の内容は似ているが、そこまでに至る伏線の内容は書き手毎によって表現の仕方が違うのか、個性が出ているのか、でっち上げの話だからか? 違っているのである。

 

そんな教会内ではロウソクや聖水やらがこの並ぶ列の脇で売っていたけど、別に商売熱心って感じじゃなく暇潰しでやっているような商店だった。

 

そこでこの教会を訪れた記念に聖水を3ドルで購入。

 

ヨルダン川の聖水(Holy Water)と、聖油(Holy Oil)が入っている。キリスト教徒ではない人間には、まったくどうでもいい液体であるがそれが3ドルで販売されているのである。

 

でも他の観光客の人達はキリスト教徒が多かったからか、ロウソクを持っている人が多かった。

 

こちらでは長蛇の列に並んでいたので、ちょっとお疲れになったツアー参加者さん達が土台の上に座っていた。ボクも試しにこちらに座ってみたら、確かにとても楽だった。ボクもすっかり体もおじいちゃんになりつつあるのだろうか?!

 

この教会の横にも別の教会があって、そこも入れるのだが現在はミサ中で入場できないようだ。

 

ジワジワと前の人が進んで行く。どうやらこの左下側にある小さな入口を降りて行くようだ。みんな並んだお疲れが少し出ているようだが、これからキリスト生誕の場所を見れる興奮によるアドレナリンを出して踏ん張る。

 

こちらは今回のツアーでの若手女性陣と、キリストの生まれた場所近くで記念撮影。彼女達は27~30歳だと言っていたけど、そんなに若い内から海外旅行に興味があって羨ましい。ボクなんて海外旅行に興味が出てきたのはまだ最近だから。

 

 「生誕の場所」入口にて 動画

どうやら中ではクリスチャンの団体が入った時に、お祈りをするのでその間は待ってないといけないので列が長引いていた模様。外には「まだか、まだか・・」と待ちわびる人達の姿が。

 

前にいた団体さんはロシア人の観光客で、我々が徐々に入口に近づくとその代表者が「我々は団体なのでまとめて入らせて!横入りしないで!」と少し怒り気味だった。。イエスが生まれた場所の近くで怒らなくても・・・と思う瞬間。

 

イエス・キリストといえば十字架に磔られて死刑になるのである(今回エルサレムでその磔にされる十字架を運んだ道「ヴィア・ドロローサ」も歩く)。そして絶命し、お墓に葬られるのであるが、その3日後に復活をした。そして色んな奇跡を見せた後40日後に昇天するのである。だから今回はそのキリストのお墓にも行くのだが、そのキリストの遺体が残っている訳ではない。

 

そのキリストのお墓とされている「聖墳墓教会」ではイエスが一旦死んだ時に入れられたと考えられる石墓の周りに教会が建てられている。もっともその300年後にここと同様にコンスタンティヌス帝の母親ヘレナが造らせた教会で、エルサレムはローマ帝国に2度に渡って攻められ破壊された後であった。しかしそんな荒れた場所でもヘレナはキリストが処刑されたゴルゴタの丘を断定したという。

 

そんなヘレナがキリストの磔にされた場所と墓を見つけるキッカケが彼女が見た夢にあったという。そんなヘレナが見た夢では、ローマ人が建てた美の女神ウェヌスの神殿の下にあるというものだった。そこで当時のローマ皇帝の母親だった彼女はその神殿を壊さすと縦穴が見つかり、その穴からは磔に使用されたと思われる十字架が三つも出てきたそうだ。

そしてその三つの十字架からイエスに使われたものを探す方法として、瀕死の病人にそれぞれの十字架を触らせた。すると三つ目の十字架に触れた途端に病人たちは元気になっていったのでそれをイエスの十字架と断定したという伝説が残っている。

ただしこんな話は明らかに人を通して話が伝わる毎に大きな話になる見本のような感じ、上手い事脚色されたストーリーにしか思えないが。。

 

いよいよ中に入っていた団体のミサが済んだようで、人波が動き出します。これをくぐっていった先にいよいよキリストの生まれたとされている場所を拝むことが出来るのである。

 

そんな興奮を隠し切れない人々。

 

この入口の先にそれがあって、今はまだ見えない状態が何とも興奮させてくれる。他の人達は既にカメラを抱えて準備万端なご様子。

 

聖杯や聖十字架、聖槍など色んな伝説が残るキリスト関連のお話。ただ物に触れただけで体が治るなんて話は眉唾すぎる・・・それらは単なる不老不死に憧れる人々の妄想から作られたストーリーであって現実ではないのだろう。でもそうやって人々の妄想や憧れや信じる心によって、色んな面白いストーリーが出来ていったのである。


この時の小さな入口に人々が吸い込まれていく様子を見て、漫画「カイジ」でパチンコ台と闘った最後のシーンを思い出してしまった。。

そしてその後はこの雄叫び・・・・ここでも雄叫びが聞こえるのであろうか?!


ここまで辿り着くのに、教会を入ってから約1時間30分。いよいよである!

 

柱にはエルサレム十字のようなマークや、陣取りゲームのような格子ラインも刻まれていた・・。

 

いよいよ神聖なるその場所へ進むのである。

 

ただし中は思った以上に広いようだ。でもなんかヌワッとした気温というか、雰囲気を感じる。

 

なだれ込んでくるツアー参加者さん達の姿。顔にボカシを入れたら、バットマンに出てくる悪役”ジョーカー”みたいな顔になってしまった笑顔のお姉さん、カメラとビデオカメラの二刀流で準備済みのローマ法王オジサンが見える。それぞれに人なりというか、個性が出る瞬間でもある。

 

こちらは相変わらず口をパカッとバカの一つ覚えのように毎回開けている男。。

 

ここにロウソクを灯すようだ。ただ細長いからか、材質のせいか、途中でグニャリと折れ曲がっているのが目立つ。。

 

 イエス誕生の地を拝む

こちらの先の穴の下が、イエス・キリストが生まれたとされている場所のようだ。大勢の大人がわざわざ長い時間並んでまで、これを見に来ているのである。早速ビニール傘オジサンが顔を突っ込む。こちらのオジサンはスマホやガラケーなどの携帯電話は持たず、観光地とかでは一切写真も撮らないという。目に焼き付けるタイプなのだろうが、人間の記憶というものは時の経過によって変わってしまう習性があるのでボクは写真という証拠を細かく残すタイプ。

 

ただし前述したようにイエス・キリストが生まれたとされる場所については福音書(聖書)では細かい記述がないそうで、馬小屋で生まれたというのも人によっては記述されていない。だからここは”キリストが生まれた場所”ではなく、”キリストが生まれたとされている場所”の方がニュアンス的には正しいのだろう。約2000年も前の物がキチッと残されているものはごく僅かなのである。

 

こちらの穴の下で生まれたそうな。今ではシルバーの十四芒星が埋め込まれています。これは18世紀に後付けされたものだそうだ。ちなみにこの穴から下を覗いてみたが、真っ暗で何も見えなかった。。

 

ボクの写真では写し方が悪かったので、その奥が全然見えなかったけど”ウッディ姉さん”から頂いた写真ではこのように周りにある絵もキレイに写っていた。


by『THE HOLY LAND-YESTERDAY AND TODAY』DAVID ROBERTS-VMB PUBLISHERS

こちらもDavid-Robertsが1839年に描いた、こちらの場所だ。この辺りは当時からあまり大きな変化はないようだ。


 

こんな”聖なる穴”をじっくりと眺めるツアー参加者さん達の姿。キリスト教徒と思われる人は、ここで祈ったり、口付けをしている人もいた。

 

その後ろには馬小屋の飼葉桶があったとされている場所もあったが、こちらはあまり人気は無かった。

 

こちらの奥にはアルメニアの教会があるという。この教会はカトリックやギリシャ正教やアルメニア正教とそれぞれに陣取っているので、なかなか建物自体の改修が進まなかったようだが自治体が率先し主導してやっと改修にこぎ着けたそうだ。

 

こちらには「後光がさす」ような感じになっているイエス・キリスト生誕の穴前。

 

下の穴は皆見ていくけど、その上の棚には意外とあまり注目はされていなかった。まあ特に目を惹くものは無かったのだけどね。。

 

その見学が終わると反対側の階段を登って、出ていく。

 

こちらはその出口を外から見たもの。

 

拝むまではだいぶ時間がかかったけど、実際にそこに行くと一瞬で見終わってしまう・・・観光地アルアル話である。でもそれだけ沢山の人がそんな列に並ぶという事はそれだけ価値があるという事。

 

偉大なイエス・キリストの教えは現在では世界人口の約1/3に浸透している。しかしそんな教えは国によって色んな宗派に分裂していき、今ではそれぞれの宗派で争いが起きるまでなっている。現にこの場所はそんな宗派たちがそれぞれに主張権を争っているのが見れる場所でもある。

 

あれだけ列に並んだけど、こっちの出口からス~~ッと入ったら、簡単に入れそうな感じがする。

だけどこういった観光地ではちゃんとルールを守りましょうね!

今となっては偉大なイエス・キリストだけど、このキリスト教が世界的にも主流な宗教となったのはこの教会を建てたヘレナの息子であるローマ皇帝コンスタンティヌス帝がキリスト教徒となり、その後ローマ帝国の国教としてキリスト教を認めた事が大きい。

 

当時の広大な土地を支配していたローマ帝国でメインの宗教となったので、それで多くの人々が影響されていったのである。

 

そんな拡大していったキリスト教も6世紀に台頭してきたイスラム教と衝突するようになる。聖書にも「汝、殺すなかれ」と書かれているようだが、宗教は戦争と密接に絡むのである。その宗教を争う為に平然と人殺しが行われたのである。聖地を取り返すという趣旨の十字軍遠征も、エルサレムを占領した時に地元に住んでいたイスラム系住人達を虐殺し、旧市街地では膝の下まで血が浸かっていたという説もある。

 

こちらは細かい模様が可愛らしくも見える門。こちらの先はカトリック系の聖カテリーナ教会があります。

 

生誕教会の見学を終了し、出口に向かいます。

 

こちらの床にあったマークは2000年を記念してカトリック教で行われたイベントのマーク。

 

まさに宗教の歴史は血の歴史と言っても過言ではない。それだけ人を支配するという事に直結していて重要な要素だったのであろう。

 

今回のヨルダン&イスラエルの旅では、それら宗教でキリスト教・イスラム教・ユダヤ教の聖地となっているエルサレムを訪問する事によって、色んな宗教の文化を知るきっかけとなった旅であった。

 

こちらはこの生誕教会付近の絵をモザイクで造ったもの。

 

こちらの教会前に置かれている像は「エウセビウス・ソポロニウス・ヒエロニムス」(Eusebius Sophronius Hieronymus)というキリスト教の聖職者であり、聖書を全てラテン語に翻訳した人物である。彼が翻訳したラテン語の聖書【ヴルガタ訳】はカトリックで標準的な聖書となるのである。

そのヒエロニムスが奥にある聖カテリーナ教会の洞窟に籠って、ひたすら聖書を翻訳し続けた。そしてその足元にある頭蓋骨は彼を支援したパウラという女性のもので、彼女の方が先に亡くなったがその頭蓋骨を実際に足元に置いて翻訳を続けた様子が再現されているのである。

 

ヒエロニムス以外にもギリシャ語で書かれていた聖書(新約聖書)をラテン語に翻訳した人間はいたが、その内容が稚拙な出来だった。そこでローマ教皇がヒエロニムスを指名して正確なラテン語で翻訳させたのである。そんな彼の訳した聖書が4世紀頃から20世紀に渡るまで標準ラテン語聖書として使われてきたのは、それだけその訳した内容が的確な正確さだったからである。

 

当時のキリスト教は東西に分かれており、西方教会はあまりギリシャ語を理解できる人間がいなかった為にラテン語に翻訳させたかったようだ。だからこの訳した聖書のおかげで今のカトリックがあるといっても過言ではないのである。

 

協力者の骸骨を足元に置いてまで、その翻訳という仕事に没頭した聖人ヒエロニムス。思わぬ出会いに感謝である。

 

教会の出口付近で何か楽しそうに写真を撮っていたので、とりあえず一緒に撮ってみる。

 

十字軍のような鎧を着て、羽の付いた悪魔(イスラム教??)を退治しているようなオブジェの前で写真を撮るローマ法王オジサン。キリスト生誕の地を思う存分に楽しめたみたいだ。

こんな様子はまた次回に続きます!

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